と
ぬかしくさつた
地主の下働き奴が
貧乏なわし等の餓鬼つかまへて
雀の子ぢや、あんめいし
今更チウでもコウでもねいもんだ。
さあ、餓鬼にもスコップ持たして
河の中、ホックリ返へさせるだに。
手といつたら猫の手でも借りたい
砂金掘りだに――。
わしの餓鬼をわしが連れて行くだに、
明日は村ぢうの餓鬼は一人も
学校さ、行かねいだらうと、云つて来い、
何をあわてて、カカア脚絆裏返しにはくだ。
わしも六十になつて
今更、山を七つも越して行き度くねいだが、
ヅングリ、ムックリ、ろくに口も利かねいで、
百姓は百姓らしくと思ひこんで、
あれもハイ、これもハイと、
お上の、おつしやる通り貧乏してきただ
山を七つ越せば、
キラキラ、金がみつかるとは――、
何たるこつちや、今時、冥利《みやうり》がつきる
やい、ウヌは何をぼんやり
気抜けのやうに立つてけつかる、
その繩を、こつちの袋に入れるだ。
唐鍬を入れたら砥石を忘れるなよ。
これ以上、貧乏する根気が無うなつたわい、
破れかぶれで、この爺が山越えする気持は、
村の衆の誰の気持とも同じだべ、
やあ、やあ、空がカッと明るくなつたわ、
未練がましい家へ火
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