不満よ、
そのハケ口をどこにみつけようか、
それとも不平不満を
そのまゝじつと堪へて時間を喰ふか
それは良くない、
おとなしい人々よ、
不平を処理する方法は
七転八倒の苦しみの中から
引き出し給へ、
温順な人、
それは味方にも可愛がられる
そして敵にも愛される、
まあ、言はゞ階級闘争の
男メカケのやうなものだ、
私はさうしたおとなしさを軽蔑する。
数十万年目に相逢ふ月と星とに就いて
私はうつむいてあるく、
何を考へて歩るくと君はおもふ、
それはさまざまのことである、
つまらぬ出来事についても
たとへばユズの匂ひで濛々と部屋中を
とぢこめた銭湯に入つたことを考へながらあるく。
それから綿にアルコールをつけて
死んだ友だちの顔をふいてやつた時の
ことを考へてあるく、
じつと地面をみつめてあるく。
私はものの観方を決して浅いとは思つてゐない、
もし私の視線が鉄の棒か、鋤《すき》であつたら、
二度とふたたび私の通つた後を
通ることができないほど
地面は私の視線で掘つくりかへされてゐるだらう
憎しみをもつて、あいつを見る、
あいつはその場で死ぬだらう。
私はいつものやうに
下うつむい
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