遅れだ、
悪いことはいはない
文学を始める前に疑ひ給へ、
そして作家になるか、
それともさつさと鞄を抱へて
保険の外交員にでもなりたまへ、
マージャンをやるやうな具合には
文学はやれないのだから
こといやしくも
プロレタリヤ作家を名乗る以上、
性根をすえて首の座に坐り給へ、
君の後ろには介錯人がついてゐる、
紫電一閃、
君の作品の良し悪しを
きりすてるものは
ひとへに八百長批評でもなければ
ジャナリズムでもない
首切人は民衆そのものだらう、
可哀さうに甘やかされた新進作家よ
ゼラチンのいつぱいつまつたやうな頭で
つくりあげる君の作品は
所詮イデオロギーといふ
貞操帯をもたない君の作品は
読者に読まれるためではなく
姦淫されるために作つてゐるのだ。




底本:「新版・小熊秀雄全集第三巻」創樹社
   1991(平成3)年2月10日 新版・第1刷発行
テキスト入力:浜野 智
テキスト校正:八巻美惠
1999年9月8日公開
青空文庫作成ファイル:
このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp)で作られました。入力、校正、制作にあたったの
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