岨で、おがみうち。
         バラバンのバン

破れ銅鑼を、敲かうよ。
         バラバンのバン
月はぼんやり、街の上
やけのやんパチ、酒場の扉、
酔ふて、もたれりや、ギイとあく。
         バラバンのバン

破れ銅鑼を、敲かうよ。
         バラバンのバン
波は太平洋の、腐れ波
浮世ドブロク、この世は地獄、
心中しよにも、相手なし。
         バラバンのバン

破れ銅鑼を、敲かうよ。
         バラバンのバン
一万三千尺、富士の山
せまい日本が、一眼に見える、
お花畑で、カルモチン。
         バラバンのバン

白い雀

花崗岩の上に樹がある、
それは美しい桜の花であつた。
この種の奇蹟は到るところにある。
奇蹟を笑ふものに呪ひあれ。

広場に立てならべた銃は
天に舞ひあがるだらう。
革命旗は窓懸けになるだらう。
私は信頼する
ミカドの国の奇蹟を、
眩き日本の現出を、

日本はノアの箱船、
沈静な歓喜を積む。
同族の肌は、この小さな場所に寄り添ふ。
やがて新しい峯に到着する。

『君は見たか白雀を!』
『私は、白い雀を見ない!』
私は見た。錆びた樹の間を
飛んで行つた白雀を。
羽は光る。
優しい幻影の霧に濡れながら、
過去から可憐に飛んできたのを。


供物

われらは我が友を、
模糊とした祭神を
わが傍にはつきりと観察し
批判し、脆い古器物は
そのふるさとへ、土壌へ還し
新しい鉄をもつて
新しい精神の神殿をつくり
新しい信仰と延長し
われらの美とし、イリュジョンとし
海、山、の衰退に再び春を呼ぶ。

わがミカドは
われらの精神の上に鎮座す、
赫々とした葦を、
銀のやうな霧を、
いたるところに神跡あり、そこに供物す、
暁には厳として火焔はのぼる、
その日射のもとに
我等の拠る城を輝かせよ。
我等の若き精神を供物とせよ。


東京ドンドロ節

銀座裏なら 貉《むじな》の棲居《すまゐ》
  化けて化かされ
   化け放題
手れん 手くだも
小出しになされ
  種がつきたら 左様なら
   ドンドロ、あんどん、昼の夢。

浅草界隈 ガラガラ蛇よ
  降らす 賽銭
   空だのみ
堂の観音さま
お笑ひなさる
  女|惚《た》らしの まじめ顔
   ドンドロ、あんどん、昼の夢。

丸ビルよいとこ シャボテン林
  若い
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