の膝を枕にして、仰向きに寝て足を長く伸ばした。(丁度酔つてゞもゐるやうに)
暗い中では映像が、青い影をいりみだして明滅した。
ちやつぷりん[#「ちやつぷりん」に傍点]が高い屋根から舗道の上に墜落したが、ゴムまり[#「まり」に傍点]のやうに跳ねあがり、折柄通かゝつた貨物自動車の屋根に顛落し、何処といふあてもなく運び去られた。
観客はどつと声をあげて笑つた。女といふものは、笑ふときでも、泣くときでも、怒るときでも、体を大きくゆすぶるものである。
(三)
水島の恋人は、皆といつしよに声をあげて、笑ひ、大げさに体をゆすぶり、いかにもお可笑くてたまらないといつた風に、体を前に屈めて、素早く、膝の上の水島の顔に接吻をしてしまつたのであつた。
そして続けさまに、続けさまに速射砲のやうに、ちやつぷりん[#「ちやつぷりん」に傍点]が尻餅をついたといつては笑ひ、電車にはねとばされたといつては笑ひ、その度毎に彼女は水島に接吻の雨を降らした、喜劇は短かつた次には長い/\悲劇物が映写された。
彼女はしく/\と泣きながら、そして今度は沈着いて悠つくり水島に長い/\接吻を与へることができた。
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