「内容までも」に傍点]目を通すようになった。その中でも、よく読んだのは、ワットの「心の改善」や、マルセットの「化学|叢話《そうわ》」や、百科全書《エンサイクロペジア》中の「電気」の章などであった。この外にリオンの「電気実験」、ボイルの「化学原理大要」も読んだらしい。
 否、ファラデーはただに本を読んだだけでは承知できないで、マルセットの本に書いてある事が正しいかどうか、実験して見よう[#「実験して見よう」に傍点]というので、ごくわずかしかもらわない小遣銭で、買えるような簡単な器械で、実験をも始めた。

     四 タタムの講義

 ファラデーはある日|賑《にぎ》やかなフリート町を歩いておったが、ふとある家の窓ガラスに貼ってある広告のビラに目をとめた。それは、ドルセット町五十三番のタタム氏が科学の講義[#「科学の講義」に傍点]をする、夕の八時からで、入場料は一シリング(五十銭)というのであった。
 これを見ると、聴きたくてたまらなくなった。まず主人リボーの許可を得、それから鍛冶職をしておった兄さんのロバートに話をして、入場料を出してもらい、聴きに行った。これが即ちファラデーが理化学の講
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