》のまゝで、耐震的工風《たいしんてきくふう》を加《くは》ふるが如《ごと》き事實《じじつ》はなかつたので、たゞ漸次《ぜんじ》に工作《こうさく》の技術《ぎじゆつ》が精巧《せいこう》に進《すゝ》んだまでである。
 それは例《たと》へば堂塔《だうたふ》伽藍《がらん》を造《つく》る場合《ばあひ》に、巨大《きよだい》なる重《おも》い屋根《やね》を支《さゝ》へる必要上《ひつえうじやう》、軸部《ぢくぶ》を充分《じうぶん》に頑丈《ぐわんぜう》に組《く》み堅《かた》めるとか、宮殿《きうでん》を造《つく》る場合《ばあひ》に、その格式《かくしき》を保《たも》ち、品位《ひんゐ》を備《そな》へるために、優良《いうれう》なる材料《ざいれう》を用《もち》ひ、入念《にふねん》の仕事《しごと》を施《ほどこ》すので、特《とく》に地震《ぢしん》を考慮《かうりよ》して特殊《とくしゆ》の工夫《くふう》を加《くは》へたのではない。
 しかし本來《ほんらい》耐震性《たいしんせい》に富《と》む木造建築《もくざうけんちく》に、特別《とくべつ》に周到《しうたう》精巧《せいかう》なる工作《こうさく》を施《ほどこ》したのであるから、自然《しぜ
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