な見世物的苦行者の目的とする所は、唯信者の供養を受け金錢財物を得るが爲である、兎に角斯る不思議な事を近來に至るまでやつて居るのである、而して其の方法も精神も共に皆二千年以前のと殆ど變らない、其の反映が面白い、一方に汽車がかかつて居り片方に然う云ふ苦行をやつて居る、之を惡く云へば印度人は畢竟光明の世界を去つて好んで暗黒の世界に就て居るのである、文明の利器が如何程あつても彼等には一切用がない、善くいへば物質的文明の世界を去つて精神的の世界に安住して居るのである、物質的科學の研究は彼等の顧みざる所であつて、昔から主として精神的の宗教、哲學と云ふ部分にのみ其の精力を傾注したが今は唯其の形骸を守るのみである、實に宗教は印度人の生命とする所であつて、人生の最も大切なものとして居るのである、で英人が印度を領するにも直接宗教には一切關係しないことを以て其の方針として居る、印度人には宗教より大切なものはないのであるから、少しでも是に干渉したならば彼等は死に至る迄反抗するか然らざれば皆移轉してしまふ、印度人の移轉は實に簡略なもので、何時何處へでも行くことが出來る、であるからして誠に宗教の事に關係すると始末
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