世界に於ける印度
松本文三郎
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【テキスト中に現れる記号について】
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#「皐+栩のつくり」の「白」に代えて「自」、第3水準1−90−35]
/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)勝ち/\山
〔〕:アクセント分解された欧文をかこむ
(例)〔Unma:ssig〕
アクセント分解についての詳細は下記URLを参照してください
http://www.aozora.gr.jp/accent_separation.html
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昨日は印度人の行に就てお話し致しましたが、印度人は苦行を以て宗教上大切な勤と看做したのであります、後世では他の宗教に於ても是を尚ぶに至りましたが、印度が一番古い、而して他の宗教に於ける苦行の事は皆印度が元になつて傳はつて來たものと考へられる、印度に於ては昨日もお話し致しました通り如何なる宗派のものと雖も皆苦行をやる、中には隨分非常な方法を以て苦行をなすのであります、何故に苦行を以て宗教上の大切なことと爲すに至つたかと申すことは、昨日もお話申した如く印度バラモンは其人生を四段に分けまして、先づ俗界の勤めを終ると世の中を退いて、神に勤める所の道を修める、俗界に於て俗の生活をなして居る間は、無論總ての自由を得ることが出來るが、修業の爲山林へ隱れると最早俗界快樂の要求を充しやうがなくなつてしまふ、先づ第一に襲ひ來るものは即ち饑渇である、水を得んと欲すれば山の中では仕方がないから、谷川まで下りて行かなければならぬ、食物を取るに至つては尚困難である、だからして草の芽、木の實位を取つて喰べるより他に途はない、着物になると愈六ヶしく、自分では着物を拵へることは無論出來ない、從つて木の葉でも綴つて體を覆うて居る位のことである、然う云ふ工合にして昔の人は山林へ這入つて修業をした、俗界の煩を避け眞正に修業をするには山へ這入るが第一の條件である、苦行は即ち是に附添うて來る自然の結果であつて、道を修めるには何うしても苦行を爲さなければならぬ、所で後世印度人の思ふには昔の豪い聖人と名づくるものは、皆其の苦行をやつて悟りを開いたのである、故に吾々も苦行をやらなければ悟りを開くことが出來ぬ、眞心に神に
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