夫れからして段々生活の兆候を表して鼻息をするやうになり、手足が生前の形に返へる、併しながら未だ脈搏は少しもない、夫れから又バタの溶けたギーを舌の上へ乘せて無理に飮込ませる、數分の後には眼が開いて平常のやうな光が出、是れで生返つてしまつた、是に於てハリダースは自分の傍に王の坐すことを始めて知つて、今や大王も亦己れを信ずるを得るであらうと云つたさうである、王も今は秋毫の疑ひを容るべき餘地を有しないので、其の不思議な事蹟に感じ大なる贈物をハリダースに與へて此の地を去らしめた、其の棺を初めて開いてから王に對して言葉を掛けたまでが殆ど三十分、其の後尚三十分ばかりの間は他の人と色々な話をして居たが、宛も病人のやうな有樣で何となく體が勞れて居るといふ状態であつた、併し見る中に次第に力を得、王の所を辭し去る時には、既に身體も精神も平常と少しの變化を認めなくなつたと云ふことであります、是れは何人も不思議とせざるを得ないであらう、或時の試驗には嚴重に守衛する代り、埋めた地面の上へ麥の種を播いた事もある、斯の如く幾度も/\試驗をやつたが、成績は常に同一である、此の如き死んだやうで、而も尚生活のある現象をば、
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