す、愈四十日經つた所で、王は宮中の一切のものを連れ、又先の英人侍醫をも連れて堂の處へ來て檢分を爲した、其の時の有樣を記したものに據れば、先づ初めに堂の四方を檢したに、更に異状を認めない、そこで一方の戸口を開いて中へ這入つて見ると、内は眞暗で何となく陰氣である、而して其の内に入つて居る所のフアキル(フアキルとは苦行の人間をいふ、フアキルは亞拉比亞の貧者と云ふ意味の語であるが、後には宗教的生活を爲し苦行に從事するものは皆亦フアキルと稱することとなり、此の言葉が遂に印度に渡り、一般に用ひられたので、印度語ではヨーギ、若しくはヨーギン即ち行者と云ふことであります、其の行者)を埋めてある處の側へ行つて見ますと、棺は依然として元の通り、其處で外面の檢分が滯りなく濟んだから、愈葢を取つた、彼は白い布で包まれてある、其の時弟子が其處へ行つて其の包んだままで、彼を取出して其の上から熱い湯をブツ掛けた、夫れより袋を解いて行者の身體を取り出して試驗して見た所が、其の袋も既に四十日間も地下に埋つて居つたのであるから、處々に黴が生えて實に不快な臭がする、夫れから袋の裡では彼は坐つた儘で、全身皺だらけになつて居る
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