痛いかゞでせう。湯の花はお勝手の棚の一ばん右の隅に甘納豆の箱に入つてをります。
お兄さまも、もう冬の休暇でお帰りなされてゞございませう。春江にもどうぞよろしく。
十二月十日[#地から1字上げ]ちよ
母上さま
新年のお祝詞もうしあげたきり、ずいぶんながくお便りさしあげず、どうしたことかとご案じあそばしてゞありませう。ちよつと風邪をひきぶらぶらいたしましたが、おかげさまでもうよろしく、昨日あたりから起きてストーブのそばで夫の野良着のつくろひなどいたしてをります。夫もきげんよく、いつもやさしくいたしてくれますゆえ、なんにも淋しいことはございません。病気のあひだは、自分でわざわざお粥をたき、いり玉子など上手にこしらへてくれました。お料理が上手なのですね、とほめましたら、開墾中はいつでも男世帯で、なんでもやつてゐたのだもの、料理ならなんでもお前よりは上手かもしれんと笑つてをりました。ほんとに猟でとつて来た野兎など、とても凝つたお料理いたしますの。風邪をひきますまへは、毎日のやうに夫や浩造さまとごいつしよにモンペにカンジキともうすもの――これは雪に足の埋まらぬやうに、軽い木を曲げて
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