史、小説につきて事実検索の方法を授けて実地練習問題を課し、これに関連せる一般読物を指定すること、
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等これなり。
三
小学校に在りてかく訓練せられたる少年が実生活に入りて読書により自ら教育を継続し参考書につきて日常必要の活知識を求め得べきは固より当然にして、小学校における読書趣味、図書館趣味の素養は通俗図書館の普及と相待ちて国民教化の活動始めて全きを見るべし。然れども参考作業のためにも、一般読書のためにも生徒に使用せしめんとする書籍は教師自らまずこれに通暁せざるべからず、故にいわく。
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通俗図書館普及策の根柢は一面、小学児童の読書趣味を養成すると同時に一面、これが指導に任ずべき教師その人を養成するに在り、しかも当面の急務は教師をして徹底的に読書趣味養成の必要が自覚せしむるより急なるはなし。
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米国の小学校に在りては、第三四学年より辞書につきて単語の引き方を授け、その定義、発音、綴字等を自ら学修せしめ、第五学年において少年百科辞典、少年地名人名辞典、少年博物辞典につき、第六学年において世界年鑑、少年文芸百科辞典、一般百科辞典につき、第七学年において農業年鑑、農事報文、郷土要覧につき、第八学年において日刊新聞の読方、処世法及び職業案内を授け小学校を出づれば辞書その他の参考書を利用して読書を継続し図書を介して日常必需の新知識を調査獲得する者あるに対し、我が小学校に在りては、教科書につきて一定の教育を施すに止まり、教科書以外、教科書以上に自ら進む所以を教えざる結果、彼我の国民教育を終了せる者の間に著しき懸隔あるは争うべからざる事実なり。これ主として国語問題に由来し、我が漢字のために費やす時間と努力とを挙げて彼はこれを自学自修の指導に利用することを得るがためなれども、国語問題の根本的解決はしばらく措き、当面の急務は現在の国語国字のままにていかにして小学教育の能率を増進し得べきかを研究するを必要とす。
今日の小学教育に幾多の長所ありとも教科書を尊重するの極[#「今日の小学教育に幾多の長所ありとも教科書を尊重するの極」に白丸傍点]、教科書以外、教科書以上に自ら進む所以を教えざる結果学校に在りて学力優良なりし児童も一たび校門を出づれば学力減退して社会の進歩に伴うこと能わざるの観あるは何人も否み難か
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