くは改めて二人のいい分をきいてから、
では、読んでみるから、お前たちでどっちが勝ちであるかきめてごらん。
といって羽仁五郎の「人民の方へむけ」という論文をゆっくりよみはじめた。三、四行よむと、二人は顔を見合わせて、「あ、わかった」といった顔つきである。ぼくは読むのをやめてしまった。この勝負、どうやら兄の負けなのである。そこでぼくはその論文のなかからつぎの一節を抜き書きして与え、ローマ字五十音に合わせてよんでごらんと課題する。
デモクラシートハ、ジンミンノタメノ、セイジデアル。
三
自由をたたかいとるために、ながい苦しみを味わってきたこの父であるが、それにしても、わが子に自由を与えることのいかにむずかしいことか。
ともすれば、封建的な権力をふりかざして子どもに接し、あとでぞっとするのである。わが家の言論の自由は、子どものためにこそ伸ばさなければならないと心をくだくのである。
考えて見れば、子どもたちばかりの社会があったら、どんなにのびのびと心たのしい明るい社会をつくるだろうかと思うのである。
おとながつくった風俗や習慣などけしとんでしまい、本能さえも別ものにつく
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