墓地展望亭
久生十蘭
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)喫茶店《キャッフェ》
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)|Belle−vue de Tombeau《ベル・ビュウ・ド・トンボウ》
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#「藹」の「言」に代えて「月」、第3水準1−91−26]
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巴里の山の手に、ペール・ラシェーズという広い墓地があって、そのうしろの小高い岡の上に、≪|Belle−vue de Tombeau《ベル・ビュウ・ド・トンボウ》≫という、一風変った名の喫茶店《キャッフェ》がある。
訳すと、「墓地展望亭《ぼちてんぼうてい》」ということにでもなろうか。なるほど、そこの土壇《テラッス》の椅子に坐ると、居ながらにして、眼の下に墓地の全景を見渡すことが出来る。
当時、私は物理学校の勤勉な一学生で、行末、役にも立たぬ小説書きになろうなどとは夢想だにしなかったので、未来の物理学者を夢みながら、実直に学業をはげんでいた。
私
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