中君、二課の神保組はなにをしている?」
「根太をひンぬくような勢いで、六人掛りで大ガサをやっています……六千万からの証券を、こんな窮屈なところへ隠しこむわけはないと思うんだが……二課のやることは、われわれには理解できないです」
「大池が死体になって湖水の底に沈んでいようなんて、頭から信じてかかっているものは一人もいないが、この湖で自殺するという遺書があれば、やはり錨繩を曳いて死体の捜査をしなくてはならない。それとおなじことだよ……神保君が待っているだろう。そろそろ行こうか」
三人がロッジに戻ると、捜査二課の神保組と伊東署の丸山捜査主任が広間の隅の床の上にあぐらをかいて煙草を喫っていた。
徹底的にロッジの中を洗いあげたふうで、家具はみなひっくりかえされ、曳出しという曳出しは口をあき、颱風でも吹きぬけて行ったようなひどいようすになっていた。
「おい、加藤君……」
神保部長刑事が広間の隅から呼びかけた。
「宇野久美子の装検をしたら、ジャンパーのかくしからこんなものが出てきたぜ」
「なんです」
「ブロミディア……普通にブロムラールといっているブロバリン系の催眠剤だ」
そういいながら、ア
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