、てめえ、ヒョイとかがんで、血溜りのなかからなにか丸いものを拾いあげたな。……たしか釦のようなものだったが、……おい! このほうはどうだ」
 ……こんどはいくら待っても返事がなかった。久我の眼に苦渋なものがあらわれ、額がうす黒く翳ってきた。
 西貝は食卓に頬杖をつきながら、騒々しい声で、
「こりゃ、いよいよドタン場だね。おい、バザロフ君、もう、観念して白状しろよ。それとも格率が違うから、自白なんて形式は認めないのかね」
 古田は眼をいからせて、
「野郎、なんとかぬかせ! やい、罪もねえおれをブチこんでおいて、よくもぬけぬけとしていやがったな。……待ってろ! こんどは、おれがしょっ引いて行ってやるから」
 顔をあげると、久我が、いった。
「いかにも僕は釦を拾いました。僕をひとごろしと思おうとなんと思おうと、それは諸君の勝手です。……だいたい、話もすんだようだから、僕はこれで失敬します」
 上衣を持って立ちあがると、襖をあけて出て行った。
「野郎、逃げるか!」
 古田は大声で叫びながら立ちあがった。那須は、待て、待て、おい待て、といいながら古田の肩に躍りかかった。

 鱗雲の間から夕陽が細
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