まじりあった石のように堅い地べたに枕木のように無造作に投げだしてあった。
 あわれを誘うようなものはなにも無い。どの屍体も極めて滑稽なようすで凝固していた。立膝をしているのもあり、ダンスのステップでも踏んでいるように片足をあげたのもあり、腕組みをして沈思しているようなのもある。いずれも燻製のように燻され、青銅色に薄黒く光っていた。
 地面に落ちたとき、最初に雪に接した部分であろうか、どの屍体にも一ヵ所ずつ焼け残ったところがあって、そこだけが蒼白い蝋のような不気味な色をしていた。どれもこれもおし潰されたような歪んだ顔をし、海鳥に喙ばまれた傷の間から骨が白くのぞきだしている。
 私は狭山の投げやりな処置に腹を立て、
「なぜ穴を掘って埋めんのか。これでは鳥の餌になってしまうじゃないか」と詰《なじ》ると、狭山は自分の腰にさげたアイヌの小刀《マキリ》を示しながら、鶴嘴はみな焼けてしまい、この小刀一梃では、どうすることもできなかったのだとこたえた。
 一、小屋に帰ると、狭山は青磁に黒い斑のはいった海鴉《ロッペン》の卵を煮て喰わせ、じぶんは船から届いた大根や玉葱を生のままで貪り喰った。釣道具も、猟銃
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