顎十郎捕物帳
猫眼の男
久生十蘭
−−
【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)府中《ふちゅう》
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)府中|六所明神《ろくしょみょうじん》
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#「竹かんむり/(金+碌のつくり)」、第3水準1−89−79]
−−
府中《ふちゅう》
「……すみませんねえ。これじゃ冥利につきるようで身体がちぢみます」
「やかましい、黙って乗っておれというのに」
駕籠に乗っているのは、ついこのあいだまで顎十郎の下まわりだった神田鍋町の御用聞、ひょろり[#「ひょろり」に傍点]の松五郎。
かついでいるほうは、もとは江戸一の捕物の名人で、今はただの駕籠屋。仙波阿古十郎あらためアコ長。相棒は九州の浪人くずれで雷土々呂進《いかずちとどろしん》こと、とど助。
とど助はどうでもいいが、顎十郎のほうは、ひょろ松にしてみればなんといっても以前の主人すじ。いわんや、捕物御前試合で勝名のりをうけたほどの推才活眼
次へ
全27ページ中1ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
久生 十蘭 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング