、これが木の葉なんぞでございますものか」
 とど助、受けとって提灯の光でためつしかめつしていたが、
「こりゃア驚いた。これはいかにも宝永乾字《ほうえいかんじ》。いたって性のいい小判だが、こんな古金《こきん》をどこから持って来るのだ」
「こんなことはわけもない。……安政や万延の新小判なら、とてもわたくしどもの手には入りませんが、こんな古金ならいくらでも持ってまいります」
「ほほう」
「わたくしどもは、どこの堂の下に、また、屋敷の床下に、どんな金が埋っているかちゃんと知っておりますから、金がいりますときには、自在にそういう埋蔵金《まいぞうきん》を掘りだしてまいります」
「なるほど。……なア、アコ長さん、よく筋が通っているじゃないか」
 とど助が、アコ長のほうへ振りかえると、アコ長が、だまって二本指を出している。とど助は、すぐうなずいて、
「なア、狸や」
「はい、なんでございます」
「二両なら、どうだ。二両なら行こうじゃないか」
 狸は、恨めしそうな顔をして、
「埋蔵金の話をしたって、いきなりつけこんで来るのはひどいですね。……しかし、まアしょうがない。では、二両はずみますから連れて行ってく
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