がついて七つの軍鶏籠《とうまる》が来たから送り帳に照しあわせて七人を受けとり、これを艀舟に積む。このほうは、送り役人と七人の囚人が伏鐘の一味。……蠣店で受けとった七人のほうには問題はない。手近なところから岸へあげて、どこかへ逃がしてしまったのだろうが、身替りになった七人をそのまま八丈島《はちじょうじま》までつれて行かれては大きに不都合《ふつごう》。そこで芝浦へんに先まわりをしていて船で追いかけ、取りしらべたところ、その七人は偽物であるによって、どうか一緒にひきかえしてもらいたいと言って、役人を船ぐるみ、どこかへ引きずりこみ、ふん縛って押しこめちまった」
 ひょろ松はうなずいて、
「なるほど、そういうわけだったら、いかにも筋が通ります。そのほうはよくわかりましたが、それで、船頭のほうはどうなンです。そう闇やみと騙されて船からおりるということもありますまいが」
「おれはこの話を聴いた最初から、船頭どもが同腹《どうふく》でなければ出来ぬ仕事だと思っていた。そこでいろいろかんがえて見ると、遠島船にはむかしから弱い尻がある。この急所をおして、いやだと言うなら訴えでると言やア船頭を船からおろすぐら
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