顎十郎捕物帳
稲荷の使
久生十蘭
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)獅子噛《しかみ》
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)年中|高麗狛《こまいぬ》
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#「てへん+毟」、第4水準2−78−12]《むし》って
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獅子噛《しかみ》
春がすみ。
どかどんどかどん、初午《はつうま》の太鼓。鳶がぴいひょろぴいひょろ。
神楽の笛の地へ長閑にツレて、なにさま、うっとりするような巳刻《よつ》さがり。
黒板塀に黒鉄の忍返し、姫小松と黒部を矧《は》ぎつけた腰舞良《こしまいら》の枝折戸から根府川の飛石がずっと泉水のほうへつづいている。桐のずんどに高野槇《こうやまき》。かさ木の梅の苔にもさびを見せた数寄《すき》な庭。
広縁の前に大きな植木棚があって、その上に、丸葉の、筒葉の、熨斗《のし》葉の、乱《みだれ》葉の、とりどりさまざまな万年青《おもと》の鉢がかれこれ二三十、ところも狭《せ》にずらりと置きならべら
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