に見えなくなるまで見送ってから二人に向い、
「コルシカ人を手にかけたものは、コルシカ人の復讐を受けなくてはならん。ここに並んだ五人の同郷人《パトラン》のうちの二人がそれを果すのでごわす。それは今日から三日目のアヴェ・マリアの刻限までに果されることになりましょう。では、どうぞ、これでお引き取り下され」といって扉《ドア》をあけて戸外を指した。
コン吉とタヌは、かねて覚悟はしていたものの、あまりのことの次第に驚きあきれ、しばらくは言葉もなく、林の中をよろめき歩いていたが、
「あゝあ、これでギリギリ結着というところだ。今度という今度は助かるまい。それともタヌ君、どうせやられるものなら、一つ死んだ気で逃げ廻ってみようか!」と、いうと、タヌは首を振って、
「いや、それは無駄よ。たとえ世界中逃げ廻ったって、いずれやられるに違いないのよ。そんなら逃げ廻って苦しむだけ無駄ね」
コン吉は天を仰いで長大息し、
「いや、そうと決まれば僕も日本男子だ。もう、じたばたするものか! 撃つのか突くのか、なんとでも勝手にするがいい、立派にやられてみせてやろう!」
あとは互いに手をとり、感慨無量に瞳を見合わすばかり
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