防のかたわらを徐行していたが、やがて大きな波の※[#「虫+廷」、第4水準2−87−52]《うねり》に衝き当り、こ憎らしい仏蘭西人がするように、その肩をピクンとさせたと思うと、堤防で囲まれた狭い視野の中から広い大洋へと乗り出すのであった。
 この時、岩壁の八人の子供たちが、突然優しい声で唄い出した。

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ピエロオさん、
ペンを貸しておくれ、
月の光で、
一|筆《ふで》書くんだ……。
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底本:「久生十蘭全集 6[#「6」はローマ数字、1−13−26]」三一書房
   1970(昭和45)年4月30日第1版第1刷発行
   1974(昭和49)年6月30日第1版第2刷発行
初出:「新青年」
   1934(昭和9)年1月号
入力:tatsuki
校正:伊藤時也
2009年10月26日作成
青空文庫作成ファイル:
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