、たいへん、至当なことだったわ。……それから、あたしたち、……すくなくとも、ここにいる三人は、ローリーさんに、あまりいい感じを持たなくなったの」
 キャラコさんが、うなずく。
「よくわかったわ。……それで芳べえさんのほうはどうなの」
 キャラコさんには、どんなことが始まっているのか、だいたい察しがつく。なるほど、ちょっと軽々しくは裁量《さいりょう》できかねるようなむずかしさがあった。
 あまりこちらが敏感に察するのはよくないと思いつつ、すこし心配になってきて、
「……つまり、芳衛さんがローリーさんのところへ遊びに行くというのね」
 うっかり口走って、キャラコさんは、顔を赧《あか》らめた。
 女学生がホテルにいる西洋人のところへ遊びに行く……。自分より若いひとたちの前で口にのせるような言葉ではない。キャラコさんは、閉口して俯《うつ》向いてしまった。
 しかし、三人のほうは、そんな意味にはとらなかった。
 鮎子さんが、眼玉を大きくひ※[#小書き片仮名ン、255−上−11]|剥《む》きながら、勢い込んで、いった。
「そうなんだよ、キャラコさん。……芳衛さんは、ご自慢のオーガンジの服を着て、毎
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