ちもゆかないようにしてしまった。この休暇ちゅう、規律正しい生活をしようと申し合わせたのである。

[#ここから3字下げ]
規律。――六時起床、九時就寝。御飯は必ず三杯食べること。四杯食べたい時は、唾《つば》を呑み込んでおく。
服従。――これは、キャラコさんが来てから。
質素。――観念上の問題。形《かたち》より心のほうを重く見ること。(例。――上等のお菓子でも不味《まず》そうに食べること)
団体精神。――一致協力して敵に当ること。
[#ここで字下げ終わり]

 朝御飯を無理やり三杯おし込むのも、窓際に整列するのも、みな青年隊《ユーゲント》の精神に即したことで、なかんずく、浮筏《ラドオ》でほかの組の女の子を沈めにかけるのは、その最も偉大な発露《はつろ》なのである。
 規律・規律・規律!
 どっちみち悪い気風ではない。それこそ、薄荷《はっか》入りの海風《うみかぜ》のようなすがすがしいものが、皆の心に吹き込んで、胸をいっぱいに膨《ふく》らせる。四人ながら、みな、この新しい生活形態に満足して、時には感激のあまり涙をこぼしそうになる。
 服装の点検が終ると、一列縦隊に隊伍《たいご》を組み、足並みそ
前へ 次へ
全33ページ中11ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
久生 十蘭 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング