れしくなって、大きな声で笑いだす。
「懸巣《かけす》さん、こんちは。……なかなかお愛想がいいわね。……あんた、ひとりで、淋しいのね。それで、遊んでほしいのでしょう?」
かけすは、止まり木の上で、ちょいと首をかしげる。
キャラコさんは、手提《てさ》げの中から銀貨をひとつとり出して、それをかけすのほうへ放ってやる。
かけすは待ちかまえていたようにツイと宙で受けとめ、一・二分|嘴《くちばし》で啣《くわ》えていたのち、それをそっと書机《デスク》の端においた。
キャラコさんは、面白くて夢中になってしまう。
今度は、銀貨を四つ取り出して、それを、一つずつ、次々に放ってやった。
かけすは、それをひとつも取り落とさずに見事に受けとめ、散らからないように一枚ずつキチンと机の上に重ねる。
キャラコさんが、手を拍《たた》く。
「やァ、お見事おみごと。……たいへん、お上手ですわ。……ほんとうに、お利口なかけすさんだこと」
うしろに、のっそりと人が立った気配がする。おどろいてふりかえって見ると、それは悦二郎氏だった。
黒い服の上に鼠色のブルーズを着、肩に採集瓶をかけ、木の枝のようなものを手に持
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