フ空洞《うつろ》の中へ潮がさしてくるような。……闇が魂を包み込んでしまうような、この、淋しい不安な感じ。……子供のときから、いくど悩まされたことだったでしょう。……ねえ、お兄さん、あなたもそうだといいましたね。……なんという、あわれな兄妹……」
キャラコさんは、レエヌさんの手を執《と》って、そっとゆすぶって見た。
「レエヌさん、……レエヌさん……」
レエヌは、ぼんやりと薄目をあけた。すっかり熱にうかされてしまって、譫妄《せんもう》状態に近いようなようすになり、空《うつろ》な視線をあてどもなく漂わせながら、のろのろした声で、切れぎれにつぶやきつづけるのだった。
「……それでも、ママが生きているうちは、まだしも生き甲斐があったわ。……学校の制服を脱ぎ捨てると、車座《くるまざ》になった潮くさい基督《エス》どもの盃に威勢よくウイスキーを注いで廻る。……あなたは、できたての自作の舞踏曲《ブウレ》を、酒場のぼろピアノが軋《きし》むほどに熱い息吹きで奏きたてる。……ミューズもアポロも大喝采《だいかっさい》。……プレジデント・フーヴアの楽長《シェフ・ドルケストル》が、あっけにとられて、盃《ヴエール
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