い。長六閣下とじぶんの名誉にかけて、宣言しただけのことは、やってのけなければならないのである。
 四人が出かけてゆくと、キャラコさんは、小屋の掃除にとりかかった。
 床板《ゆかいた》のあいだから生え出している草をたんねんにむしりとり、四つの窓には四人の防水|衣《ぎ》をカーテンのかわりに掛けた。炊事場の棚をつけなおし、落葉でつまっていた樋《とい》を掃除して、清水《しみず》が流場《ながし》へ流れこむようにした。雑草のなかに倒れていた扉《ドア》をひきおこし、骨を折ってこれを入口にとりつけた。
 これに、午前いっぱいかかってしまった。
 小屋のなかが片づくと、そろそろ夕食の支度にとりかからなくてはならない。まず、炊事道具と食糧の検査をはじめた。
 四人がしょってきたものは、たいへん貧弱である。コッフェルが一つ、フォークのついたナイフが四挺、アルミのコップが四つ。……これでは、ないほうがましなくらいである。
 材料のほうになると、これもまた心細いきわみだった。キャラコさんのぶんを合わせて、つぎのような貧弱な材料で、村へ買出しにくだる日までもちこたえなくてはならない。

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