い。長六閣下とじぶんの名誉にかけて、宣言しただけのことは、やってのけなければならないのである。
四人が出かけてゆくと、キャラコさんは、小屋の掃除にとりかかった。
床板《ゆかいた》のあいだから生え出している草をたんねんにむしりとり、四つの窓には四人の防水|衣《ぎ》をカーテンのかわりに掛けた。炊事場の棚をつけなおし、落葉でつまっていた樋《とい》を掃除して、清水《しみず》が流場《ながし》へ流れこむようにした。雑草のなかに倒れていた扉《ドア》をひきおこし、骨を折ってこれを入口にとりつけた。
これに、午前いっぱいかかってしまった。
小屋のなかが片づくと、そろそろ夕食の支度にとりかからなくてはならない。まず、炊事道具と食糧の検査をはじめた。
四人がしょってきたものは、たいへん貧弱である。コッフェルが一つ、フォークのついたナイフが四挺、アルミのコップが四つ。……これでは、ないほうがましなくらいである。
材料のほうになると、これもまた心細いきわみだった。キャラコさんのぶんを合わせて、つぎのような貧弱な材料で、村へ買出しにくだる日までもちこたえなくてはならない。
[#ここから3字下げ]
(
前へ
次へ
全59ページ中27ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
久生 十蘭 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング