キャラコさん
雪の山小屋
久生十蘭
−−
【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)紺碧《こんぺき》
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)南|瑞西《スイス》
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#「插」でつくりの縦棒が下に突き抜けている、第4水準2−13−28]
−−
一
雲ひとつない紺碧《こんぺき》の空。
波のようにゆるく起伏する大雪原を縁《ふち》取りした、明るい白樺の疎林や、蒼黝《あおぐろ》い針葉樹の列が、銀色の雪の上にクッキリと濃紫《こむらさき》の影をおとし、岳樺《たけかば》の枝に氷雪がからみついて降誕祭《クリスマス》の塔菓子のようにもっさりともりあがり、氷暈《ハロオ》に包まれてキラキラと五彩にきらめきわたっている。
「ヤッホー」
「ヤッホーホー」
志賀高原の朝日山のスロープの裾《すそ》で、花束をふりまいたような美しい四五人のお嬢さんが、すべったりころんだり、キャッキャッと高笑いしたりしながら、思い出したように声をあわせて山
次へ
全53ページ中1ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
久生 十蘭 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング