郭ごとそっくり姿を消し、そのあとに、小径づくりの茶庭を控えた数寄屋が建っていた。
「すっかり変ってしまったわね」
「古いものは、なにも残っていません。パパが言っていましたよ、気に入ってくれればいいがって……パパはあなたのために、やっているんです、つまるところはね」
秋川が献上の帯に白足袋という装《なり》で玄関へ出てきた。
「いらっしゃい……訳のわからない電報で、びっくりなすったでしょう」
「きょうは、おふたりの誕生日のお祝い?」
「それもあるが、その前に、ちょっとお話を」
愛一郎と暁子に、あなたたちは庭で遊んでいなさいと言い、先に立って、サト子を奥の客間へ連れて行った。
「お勤めのほうは、どんなぐあいです?」
ソファに掛けるなり、秋川がたずねた。
「資源庁の外局なんかとちがって、みな、よく勉強するそうじゃないですか」
「技官の指導で、雇員だけのグループでウラニウム資源の研究会のようなものをやっています。……でも、どうして、そんなこと、ごぞんじ?」
「あなたをあそこへ入れたのは、われわれの仕業だったんです」
祖父の死や、神月の自殺や、偽ドルのかかりあい、質の悪い外国人に国外へ連れ
前へ
次へ
全278ページ中265ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
久生 十蘭 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング