「神月は、秋川なんかといっしょなんだわ」
 愛一郎は神月伊佐吉を憎んでいるようだが、どういう関係にあるのか、秋川は、毎月、神月に生活費の仕送りをし、神月が銀座のバーやレストランで使っただけのものは、文句もいわずに払ってやっているということも聞いている。秋川が神月といっしょに食事をするなんてのは、ありそうなことだった。
「神月なんか、どうでもいいけど、秋川や愛一郎に会えるなら、うれしいみたいだ」
 ひっそりとした秋の風景のなかで、秋川と対坐したひと夜の楽しい思い出は、いまも心のまんなかに場をとっている。秋川氏はお行儀がよすぎ、どこか、よそよそしいところがあるが、話している間じゅう、気持が落着いて、心の調和といったようなものを感じさせる。もういちど、おだやかな人柄の紳士と対坐してみたいとねがっていたが、こんな折に秋川に会えるのかと思うと、気持がはずんできて、ひとりでに笑いだしそうになる。
 ガラス扉を押して、クロークにコートをあずけると、ボーイ長らしいのが、見さげはてたような目付で、サト子のほうへやってきた。
「どなたさまに?」
「神月さんに」
 ボーイ長は冷淡にうなずいた。
「うけたまわ
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