、今日まで、つないでいてくれたんですけど、こんなものにたよっているのでは、みじめでやりきれないの。愛一郎さんだって、こんな暁子、好きじゃないでしょう」
 いっこうに通じないことを、くりかえしくりかえし語っているうちに、気持が落着いたのか、曇りのない、さっきの澄みきった顔になって、
「迷うのは、やめました。やはり、渡していただくわ」
 と、キッパリとした口調で言った。
「お預りします。いつ、お伺いできるかわからないけど、それで、よろしかったら」
「ひと月あとでも、半年のあとでも、ご都合のよろしいときに……」
 ちょっと言葉を切って、
「これを、お渡しくださるとき、愛一郎さんがあたくしに会いに来てくだすったのでないことが、暁子に、よくわかったと言っていたって、ひと言、伝えていただきたいの」
 と、調子の高い声で言った。
 サト子は、はっとして暁子の顔を見返した。心にキザシかけた思いがあったが、それは、どういうことなのか、サト子自身にも、よくわからなかった。

  旅への誘い

 雨雲が垂れて、夕暮れのように暗くなった西銀座の狭い通りを、風速十五メートルの強風が、急行列車のような音をたてて吹
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