が嫌になったからです……清浄野菜をつくることは、死んだ父の夢だったので、土地といっしょに、親父の意志も相続してやったというわけです。ふしぎなんてことは、ありません」
「野菜を売って歩くのに、いまどき、牛車に積んでいくなんて、すこし変りすぎているようね……あなたは、水上から十三億の鉱業権を譲り受けた方だから、やろうと思ったら、どんなことでもできるはずなのに、そんなふうにしていると、なにか、仮装でもしているようで、おかしいわ」
 坂田は、あけっ放した顔で、はっはっと笑った。
「化けているって?……内地の生活は複雑で、たれもみな二重生活をしていますね。仮装しているように見えるなら、私の場合も、それだと思ってください……時間が惜しいから、私のほうからはじめますが、水上氏のお孫さんのサト子さん、いま、どこにいらっしゃるんでしょう?」
 由良は、とぼけた顔で、たずねかえした。
「サト子に、どういうご用なんです?」
「サト子さんは、久しく西荻窪の植木屋の離屋に、お帰りにならないということですが、急いでお目にかからなくてはならない用件があるので」
 由良は、そら出たといった顔で、芳夫に味な目くばせをし
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