きながら、
「この家は、アメリカ人のやっているバア・レストランで、スウェーデン式の前菜を、アメリカ風にあちこちした、しゃれたオードォヴルを食わせるので有名なんです……アメちゃんのバイヤーたちの、たまりみたいになっているんでね」
 階下のサロン・バアで、楽士がピアノでドビュッシイの『金魚』を奏《ひ》いている。
「オードォヴルはいいけど、こんなところへ呼びだして、どうしようというわけ? いくら、あなたがオマセさんでも……」
 芳夫は、笑いもせずに、はじきかえした。
「そんなご心配はなさらないで……きょうは、まじめな商談がございますんです」
「あなたは、抜け目のないひとだから、むだに、ひとを呼びだすなんてことは、ないのでしょうけど……それで?」
「ここで坂田省吾と、掛けあいをやろうというのです。おばさまには、立会いくらいのところで、おさまっていただいて……」
 サロン・バアのピアノは、ショパンの『雨だれ』になった。氷雨の雨足にテンポをあわせるように、だるい調子で奏いている。由良は眉の間に嫌皺《いやじわ》をよせながら、
「サト子なんかもそうだけど、あなたがたの話って、いきなり、突っ拍子もなくは
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