れば、おさまらないことになった……撃っても、斬っても、恥の上塗りになるという、やる瀬ない事情なもんだから、その男を、あるところへひっぱりだして、車でつっかけて、始末してしまおうと思った……あなたも知っている人物だから、名を言ってもかまわない……その男というのは、神月伊佐吉です」
 新婚早々の細君を鎌倉に残し、英国の戴冠式に行っている間に、刃傷沙汰《にんじょうざた》に及ばなくてはならないような事件が起き、そしてその相手が神月伊佐吉ということになれば、聞かなくともおおよそのところは察しられそうだったが、中村が、なぜこんなうちあけ話をする気になったのか納得がいかず、サト子は、浮かない顔で聞いていた。
 そのうちに、大川に沿った、隅田公園のそばの広い道路に出た。
 中村は、側窓のなかで移りかわる川岸の道を、目を細めてながめていたが、うってかわった、おだやかな口調で、
「いまの話のつづきですが、私が神月をやろうと思ったのは、ここだった……月夜でしたが、ちょうど、このあたりを私の車が走っていて、五十メートルほど前方を、神月が歩いていた……」
「おどかそうたって、だめ……」
 サト子は、おしかえすよ
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