はないが、夜おそく、やってくるようなこともあるらしい。
どんなに困っても、シヅのところまで落ちこむはずはないと、サト子は、じぶんを信用しているが、じぶんを身ぎれいにしておくために、いやなことをひとにやらせ、他人の犠牲において、ぬくぬくと暮しているというのは、どういうことなのだろう。
シヅは、ゆうべもひどく酔って、夜中ちかくに車で送られて帰ってきた。着ているものを脱がせて、ベッドへおしあげるので、サト子は大汗をかいた。
骨折りを嫌《いと》うのではない。居たたまらなくなっているのは、もっとほかの事情だ。どんなに酔って帰っても、シヅは早く起きだして、仕事をさがしに出るサト子のために、食事をつくってくれる。見るからに辛そうなときでも、ニコニコ笑いながらやっている。そういうことが重なって、やりきれない心の負担になった。
サト子は、シヅにお別れの手紙を書くつもりで、衣装戸棚へ化粧箱をとりに行った。
十月はじめの長雨で、湿気のしみ通った化粧箱が、棚の中段にチョコンと載っている。外套掛《がいとうか》けには、袖口のすりきれた薄地のコートが、仕留《しと》められたケモノの皮のように、あわれなようす
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