こらなければならぬ、生存競争では本当の文明というものは築き上げることが出来ないものであるというようにインド人は考える。また文明は都会生活から興るというのでありますが、論より証據でインドには都会というものはない、われわれの意味での都会というものはヨーロッパの人が来て作っているといってよいのであります。殆ど村落が少し増したというのがインドの都会である。インドでは村落のみであるとすると、インドには到底文明は出来ないことになる。而してまた村落よりもう一層淋しい山林生活がインドの理想となっているのであります。哲学も山林の中より生まれ、宗教は無論のこと、教育も音楽もすべてのことが、われわれが見て文明の要素と考えられるようなものはことごとく山林生活の中から出て来ている、インドの理想は山の中にあるといってもよいので、仙人生活がインド人の理想である。山林生活からインドの文明は出ているのに、ヨーロッパの文明は都会生活から来ている。インド人の考えで、都会生活とは何だ、罪悪の巣窟ではないか、人間は都会生活の結果としていよいよ悪くなって行くというのでありますから、考えがまるで違っているのであります。
 またヨー
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