風変りの理想でありましてすべての方面で他の国とは全く違った理想を持っているのであります。人類愛――人間がお互いに愛するということはよく人の説くことでありますけれども、インドではこれを押し拡めて動物愛としているのであります。その動物愛をまた押し進めてこれを宗教愛としているのでありますから、動物と親しむことは人間と同じで、ことに牛の如きは神聖の動物とされておりますからではありますけれども、殺すなどのことは無論しない、昔から牡牛は労働に使役しますが、牝牛は決して労働には使わないというふうで、牛の殺されるのを見るとインド人は自分の兄弟が殺される如くに感じ、直ちに自分の生命を棄ててもその牛を救いに行くというふうの人間なのであります。それで毎年マホメット教の祭の時には牛を殺すのであるが、その殺す前に意地悪く、これを今夜殺して犠牲に供するのであるといってインド人の町を牽いて歩いて皆に犠牲になる牛を見せるのであります。
そうするとインドの青年は徒党を組んでその牛を助けに行く、それで毎年マホメット教とインド教との間に戦争が起こります。そういうふうの国柄であるのでありますからそこ、に[#「そこ、に」はマ
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