脱し、安穩を得たる人なり。
 九七[#「九七」は底本では「六七」] (餘の)信を離れ、無作を證し、(續生の)結を斷ち、誘惑を斥ぞけ、希望を棄てたる人こそ眞の最上士なれ。

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無作―涅槃の異名。
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 九八 村落に於ても、將た林中に於ても、平野に於ても、高原に於ても、阿羅漢の住する處は樂しからざるなし。
 九九 林は愛樂すべし、これ俗人の好まざる所、離欲の人は此を樂しむ、彼等は愛欲を求めざるが故なり。
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    第八 千の部

一〇〇 無益の句より成る一千言よりも、聞きて安穩を得る一の益ある句を勝れたりとす。
一〇一 無益の句より成る一千偈よりも、聞きて安穩を得る一の偈文を優れたりとす。
一〇二 無益の句より成る百偈を誦むも、聞きて安穩を得る一法句を(誦むに)如かず。
一〇三 戰場に於て千々の敵に克つよりも、一の己に克つ人こそ實に戰士中の最上と云ふべけれ。
一〇四 己に克つを勝れたりとす、他の諸人に克つに非ず、自己を從へ、所行常に節制ある人の勝利には
一〇五 神も健闥婆も亦魔羅も及び梵も、斯かる人の勝利には反抗する能はず。


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