羅門の部

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婆羅門―婆羅門は古代印度にて社會の第一位に居り、宗教、哲學等の指導者として崇められ、社會中の最も偉き人、神に近き人と認められたり、佛教にては此語は罪惡を排除せる義と解し阿羅漢と云ふと同じ義とし、往々にして佛陀と同義に用ゐらる。
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三八三 勇敢に流を截れ、欲を除け、婆羅門よ、變化の滅盡を知り了りて汝は無作を知る、婆羅門よ。

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流―渇愛を喩ふ。
婆羅門―漏盡者《けがれなきひと》を指す、但しこの頌文は因に果名を與へたるなり。
無作―涅槃。
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三八四 婆羅門あり、若し二法の彼岸に達しぬれば此の智者の一切の繋縛は滅盡す。

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二法―靜止と觀察とを云ふ。
彼岸―完全の域。
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三八五 彼岸も非彼岸も彼岸非彼岸もなき無畏無繋縛の人を我は婆羅門と謂ふ。
三八六 靜慮し、離貪し、堅住し、已に所作を作し、心の穢なく、最上義を獲得せる人を我は婆羅門と謂ふ。
三八七 日は晝に照り、月は夜を照らし、兵は甲を※[#「てへん+鐶のつくり」、第3水準1−85−3]して照り、婆羅門は靜慮して照り、佛は威光を以て一切迷妄の闇を照らす。
三八八 諸惡を去るが故に婆羅門なり、寂靜行のゆゑに沙門と謂はる、己の垢を除遣せるが故に出家と謂はる。

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文中「去る」「寂靜」「除遣」は次の如く婆羅門、沙門、出家と音相似たるを以て斯く言へり。
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三八九 婆羅門を打たざれ、(打たれたる)婆羅門は(打ちたる人に)向はざれ、いかで婆羅門を打たんや、況やいかで(打ちたる)人に向はんや。
三九〇 所愛に對して心を抑止するは是れ婆羅門の少なからざる勝事なり、傷害の意輟むに應じてそれだけの苦即ち滅す。

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所愛に對して云々―父母佛陀等の所愛に對して忿の心を抑止するなり。
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三九一 身と語と意にて惡を造らずして(此の)三處を護る人を我は婆羅門と謂ふ。
三九二 若し正等覺者所説の法を説示するものあらば、人は彼を恭しく禮すべし、婆羅門が火天を(禮するが)如くに。
三九三 婆羅門は結髮に由るに非ず、族に由るに非ず、姓に由るに非ず、若し實と法とを有すれば彼は淨婆羅門なり。

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