》が眼《め》未《いま》だ瞑《めい》せずして、死骸《むくろ》は臺《だい》の上《うへ》に横臥《よこたは》つてゐる。夜《よ》に入《い》つて月《つき》は影暗《かげくら》く彼《かれ》を輝《てら》した。翌朝《よくてう》セルゲイ、セルゲヰチは此《こゝ》に來《き》て、熱心《ねつしん》に十|字架《じか》に向《むか》つて祈祷《きたう》を捧《さゝ》げ、自分等《じぶんら》が前《さき》の院長《ゐんちやう》たりし人《ひと》の眼《め》を合《あ》はしたので有《あ》つた。
 一|日《にち》を經《へ》て、アンドレイ、エヒミチは埋葬《まいさう》された。其《そ》の祈祷式《きたうしき》に預《あづか》つたのは、唯《たゞ》ミハイル、アウエリヤヌヰチと、ダリユシカとで。



底本:「明治文學全集 82 明治女流文學集(二)」筑摩書房
   1965(昭和40)年12月10日発行
   1989(平成元)年2月20日初版第5刷
底本の親本:「露國文豪 チエホフ傑作集」獅子吼書房
   1908(明治41)年10月
初出:「文藝界」
   1906(明治39)年4月
※底本は、物を数える際や地名などに用いる「ヶ」(区点番号5−86)を
前へ 次へ
全197ページ中196ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
瀬沼 夏葉 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング