鰊舟の囲ほぐしや春浅し

尺八で追分吹くや夏の月

夏の月野風呂の中で砕けけり

蛙鳴くコタンは暮れて雨しきり

伝説の沼に淋しき蛙かな

偉いなと子供歌うや夏の月

新聞の広告も読む夜長かな

夜長さや二伸も書いて又一句

外国に雁見て思う故郷かな

雁落ちてあそこの森は暮れにけり

十一州はや訪れぬ初あられ

まず今日の日記に書かん初霰

雪除けや外で受け取る新聞紙

流れ水流れながらに凍りけり

塞翁の馬で今年も暮れにけり

雪空に星一つあり枯木立

枯葉みな地に抱れんとて地へ還る
[#ここで字下げ終わり]
[#地付き]〔昭和二十九年版遺稿集より〕



底本:「北海道文学全集 第11巻」立風書房
   1980(昭和55)年11月10日初版第1刷発行
底本の親本:「違星北斗遺稿集」違星北斗の会
   1954(昭和29)年8月15日発行
入力:田中敬三
校正:土屋隆
2006年7月23日作成
青空文庫作成ファイル:
このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティ
前へ 次へ
全11ページ中10ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
違星 北斗 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング