驢馬の びつこ
新美南吉
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)體《からだ》を
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張が かはいゝ 驢馬を 一匹 買ひました。ところが 歩かせて 見ると その 驢馬は びつこを ひくのです。
「なぜ びつこを ひくのだらう。」と 考へて 見ましたが わかりません。ちようど とほりかゝつた 物しりを よびとめて たづねて 見ると、物しりは、驢馬の 體《からだ》を よく しらべてから いひました。
「耳と 耳の 間に 錢ほどの 禿が ある、この 禿に 風が あたつて 寒いから びつこを ひくのぢや。帽子を つくつて かむせたが、よからう。」
やつぱり 物しりだけ あつて、利口な ことを いふと 張は かんしんしながら、羊の 毛で 圓い 帽子を つくりました。それを 驢馬の 頭に かむせて、さて 歩かせて 見ると やつぱり びつこを ひきます。張は 物しりに だまされたと 思つて、まつかに なつて 驢馬を ひつぱつて ゆきました。
「人を だますにも ほどが ある。お前さんの いふとほり 帽子を かむせたが やつぱり びつこを ひくでは ないか。」すると 物
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