《やひ》な、非文化的な、下劣《げれつ》なものがいるということを、都会ふうの、近代的な明るい藤井先生が、どうお考えになるかと思うと、まったく、いたたまらなかった。
 藤井先生は、相手を見てすこしことばの調子をおとしながら、いろいろ石太郎にきいたが、要領を得なかった。なにしろ石は、くらげのように、つくえの上でぐにゃつくばかりで、返事というものをしなかったからである。
 そこで近くにいる古手屋の遠助《とおすけ》が、とくいになって説明申しあげた。まるで見世物の口上《こうじょう》いいのように、石太郎はよく屁《へ》をひること、どんな屁でも注文どおりできること、それらには、それぞれ名まえがついていること等等《とうとう》。
 春吉君は、古手屋の遠助のあほうが、そんなろくでもないことを、手がら顔して語るのを聞きながら、それらのすべてのことを、あかぬけのした、頭をテカテカになでつけられた藤井先生が、どんなにけいべつされるかと思って、じつにやりきれなかったのである。
 一年おきにやってくる、町の小学校との合同運動会でも、春吉君は、石太郎の存在をうらめしく思った。その日には春吉君の学校は、白いべんとうのつつみ
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