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長女  よし坊ちゃん。
三男  まだきこえるね、ねえちゃん。
長女  ええ、まだきこえるわ。もうじき、土塀《どべい》の家の角《かど》をまがると、きこえなくなるわ。ほら、もうきこえなくなったでしょう。
三男  まだきこえるよ。
長女  でももう蚊《か》が鳴くほどだけよ。
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長女  もうなんにもきこえなくなってよ。こんどは、村のあっちのはしへいくのだわね。
三男  まだきこえるよ。
長女  あんたの耳の中に笛の音が残ってるんだわ。
三男  まだきこえるよ。
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長女  なにをそんなにあたしの顔見てるの。いやよ、よし坊ちゃん。
三男  もうせん、ねえちゃんと花のかくしっこしたろう。
長女  いつのこと?
三男  ぼくが病気になるまえにしたよ。貝がらでふせて土の下にかくしたじゃないか。
長女  あ、そうね。あんときよし坊ちゃんがかくしてきたの、あたしいくらさが
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