きますよ。
三男 うそだい。おはやしなんかここまできやしないや。塩屋さんとこまできて、あそこからまた帰っていっちゃうんだ。ぼく去年ついてきたからよく知ってら。
母 おや、そうかい。でも塩屋さんとこまでくれば、おはやしの音がよくきこえるから、いいじゃないかい。大太鼓の音が、どうんどうんてお家の障子《しょうじ》にひびいてくるよ。いいでしょう。
三男 かあちゃん。
母 なんだい。
三男 ぼくにも、祭の着物をきせてくれよ。
母 おまえさんは祭にいかないじゃないの。
三男 ぼくも祭の着物がきたいや。にいちゃんたちみんながきたんだもの。
母 そうかい。それじゃ、よし坊ちゃんにもきせてあげようね。
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(母親、たんすから一枚の晴着をとり出す)
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三男 それじゃないよ。そんなの学校にあがったとききたんだよ。
母 おや、かあさん、忘れっぽいね。ではこれだね。
三男 うん。
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(母親きかえさしてやる)
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