《かえる》は土にもぐりました。
「いまいったことをわすれるな。」
といって、黄色の蛙《かえる》ももぐりこみました。
寒い冬がやってきました。蛙《かえる》たちのもぐっている土の上に、びゅうびゅうと北風がふいたり、霜柱《しもばしら》が立ったりしました。
そしてそれから、春がめぐってきました。
土の中にねむっていた蛙《かえる》たちは、せなかの上の土があたたかくなってきたのでわかりました。
さいしょに、緑の蛙《かえる》が目をさましました。土の上に出てみました。まだほかの蛙《かえる》は出ていません。
「おいおい、おきたまえ。もう春だぞ。」
と土の中にむかってよびました。
すると、黄色の蛙《かえる》が、
「やれやれ、春になったか。」
といって、土から出てきました。
「去年《きょねん》のけんか、わすれたか。」
と緑の蛙《かえる》がいいました。
「待て待て。からだの土をあらいおとしてからにしようぜ。」
と黄色の蛙《かえる》がいいました。
二ひきの蛙《かえる》は、からだから泥土《どろつち》をおとすために、池《いけ》のほうにいきました。
池《いけ》には新しくわきでて、ラムネのようにすがすがし
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