して、こおった土くれをかぶりながら、がたがたがた、どすんと、深いあなの中に落ちこみました。
 ふいをくった少佐は、しばらくあなのそこでぼんやりしていましたが、あたりのやみに目もなれ、気もおちついてくると、あなの中のようすがうすうすわかってきました。それは四メートル以上の深さで、そこのほうがひろがっている、水のかれた古井戸だったのです。
 少佐は、声を出して歩哨《ほしょう》をよぼうとしましたが、まてまて、深い井戸の中のことだから、歩哨のいるところまで、声がとおるかどうかわからない、それに、もし、ロシアの斥候《せっこう》にききつけられたら、むざむざところされるにきまっている、と思いかえし、そのまま、だまってこしをおろしました。
 あすの朝になったら、だれかがさがしあてて、ひきあげてくれるだろうと考えながら、まるい井戸の口でしきられた星空を見つめていました。そのうちに、井戸の中があんがいあたたかなので、うとうととねむりだしました。
 ふとめざめたときは、もう夜があけていました。少佐はううんとあくびをしながら、赤くかがやいた空を見あげたのち、
 「ちょっ、どうしたらいいかな」
と、心の中でつぶ
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