最後の胡弓弾き
新美南吉
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)竹藪《たけやぶ》
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)毎晩|鼓《つづみ》の音《おと》と
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#「仝」の「工」に代えて「吉」、屋号を示す記号、59−12]
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一
旧の正月が近くなると、竹藪《たけやぶ》の多いこの小さな村で、毎晩|鼓《つづみ》の音《おと》と胡弓《こきゅう》のすすりなくような声が聞えた。百姓の中で鼓と胡弓のうまい者が稽古《けいこ》をするのであった。
そしていよいよ旧正月がやって来ると、その人たちは二人ずつ組になり、一人は鼓を、も一人は胡弓を持って旅に出ていった。上手《じょうず》な人たちは東京や大阪までいって一月《ひとつき》も帰らなかった。また信州《しんしゅう》の寒い山国へ出かけるものもあった。あまり上手でない人や、遠くへいけない人は村からあまり遠くない町へいった。それでも三里はあった。
町の門《かど》ごと
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